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駆け出しキーボーディストの皆様に耳コピの仕方、曲の解説などやってます。

キャビンアテンダントから見る顧客視点

だいぶカタいタイトルで始まってしまいました。

さて、既に投稿しているように、こないだインドへ行ってきたわけですが、飛行機の中でインド人乗客と日本人CAとのコミュニケーションがいろいろと考えさせられました。

インドってめちゃくちゃベジタリアンが多いんです。当然ながら機内食にはベジタリアン向けのメニューが用意されていますね。で、CAは食事をサーブする前に、特別メニューを注文した人全員に「あなたはベジタリアンのメニューをオーダーしましたよね」と確認するわけです。
しかし、その確認がインド人に通じないんです。全くと言っていいほど。僕は通路側に座っていて、隣(窓際)にインド人のおばあちゃんがいたのですが、CAが何度確認しても言葉が通じないんです。最終的にCAは諦めて機内食サーブし始めました。おばあちゃんはこれがベジなのかノンベジなのか分からず戸惑っていましたが、ここでイケメンの僕が地球の歩き方のページを必死に繰り、「野菜だから大丈夫だ」と教え、おばあちゃんはようやく食べ始めることができました。

このケースには顧客視点の大切さと難しさが凝縮されているように思えました。
特別食をオーダーしたことの確認は、日本では当たり前のことのように思えます。取り違えたら大変ですからね。でもインドでそんなきめ細やかなサービスが行われてるわけないです。笑 つまり、おばあちゃんはそんな質問が飛んでくることは全く想定できなかったと思います。
加えて言語の壁がありました。インドでは英語が公用語ですが、基本的には普段の仕事で使う以上の語彙は持っていないように思えます。そんな状況なので、おばあちゃんは質問内容を類推することもできず、(CAの英語の発音が壊滅的だったことも手伝って、)意味が分からなかった、ということでしょう。

それでは、CAの対応が悪かったかと言うと、全くそんなことありませんでした。そもそも、わざわざ特別メニューの確認を取ること自体がすごいし、何度も何度も一生懸命伝えようとしていたあたり、あのCAは頑張って仕事してるよなあ・・・と思えます。

問題なのは、世界中で画一的なサービスを提供することなんじゃないかと思いました。日本人であれば、わざわざ確認に来てくれると気持ちがいいですよね(個人的には過度なサービスには疑問があるのですが、その話は今度)。でも今回の件は、ベジタリアンが多そうな全ての国の言語で「ベジタリアン用」と書いた紙を、機内食をサーブするときに食事に一枚挟んでおけば解決する話でした。それがたとえ無造作であっても、「目の前の食事に肉が入っているのかどうか」がハッキリ分かる方が、インド人のおばあちゃんにとってはいいサービスなんだと思います。

じゃあそれってどうやって解決すべきでしょうか?(日本の航空会社だったので)日本の本社にいるCA用のマニュアルを作っている担当者に「インド便では、英語が通じないベジタリアン用に、それだと分かる紙を挟むようにマニュアル追記しろ」とでも言うべきでしょうか?それではあまりに対症療法的ですよね。個人的には、この件のキモは、各国の地上で行われているサービスレベルを航空会社が理解できていない(か、する気がないか、分かっているけど無視しているか、分かっているけどしがらみが多くて改善できていない)、という点だと思います。どの国ではどのようなサービスが一般的で、そういう人たちが思う「一流のサービス」が何なのか、考える必要があると思います。それは日本人の視点で考える一流のサービスとはちょっと違うかもしれませんが。例えば、東南アジアでの一流のもてなしは冷房を強めに効かせること、なんかはいい例で、日本とはちょっと違いますよね。
各国の人たちが考える一流のサービスを知るためには、各国に行かなきゃダメです。でも現実的に日本のHQが全世界の各国のサービスレベルを理解することは不可能だと思いますし、それを全部マニュアルに盛り込んだらCA業務が崩壊しそうな気がします。と考えると、消去法的に、CAの裁量を増やしてあげるのが一番いいような気がします。彼らは世界中を飛び回っていて、(人によっては空港の周囲だけかもしれないけど)各国の人が普段どんなサービスを受けているのか分かっているでしょうしね。

こうやって考えると顧客視点てほんと難しいですねえ。値段を下げてパッケージ化したサービスを売っている以上、サービスは画一的になりがちだけど、乗客の出身国から類推される価値観に合ったサービスを提供すべき場面があるわけです。この矛盾を解決するのは、CAの臨機応変さなような気がしますね。CAも、そっちの方が仕事楽しいと思うし、もっとCA自身が考えるサービスのあり方みたいなものを現場に反映できるような仕組みがあればいいのにな、と思います。