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駆け出しキーボーディストの皆様に耳コピの仕方、曲の解説などやってます。

耳コピのすすめ(その2)

その2です。とりあえず、お題を設定して音を取ってみましょう。

 

お題 :Virtual Insanity


Jamiroqaui - Virtual Insanity (Official Music Video)

 

はい、カップラーメンのCMでも使われた超有名曲ですね。ちょっと古いですが、いってみましょう。この曲を選んだのは、イントロでピアノの音がよく聞こえるからです。かなりオシャレなサウンドですが、頑張ればできます。
リンクがうまく再生できない場合はYoutubeで調べてね!笑 アメリカだと再生できないけど日本ではOKというケースもあるみたいなので検証不可能・・・

 

キーとダイアトニックコード確認

まずキーを確認します。確認のしかたはいろいろありますが、ググってくださいw基本的にググれば分かることは書きませんw

キーはEフラットマイナーですね。そうすると、ダイアトニックコードは、

Ebm7, Fm7-5, GbM7, Abm7, Bbm7, BM7, Db7

となりますね。ダイアトニックコードを確認するメリットですが、このコードのどれかが正解であることが多いからです。特にトラディショナルな曲であればあるほど。つまり、ルート音さえ取れてしまえば、あとはそれに対応するダイアトニックコードをつけていけば半分終わりです。ということで、やってみましょう。

ダイアトニックコードによるコード候補

お題のイントロ、ルートはEb, Ab, Db, Gb, C, B, Bbのループです。ということで、とりあえずただダイアトニックコードをつけるとこうなります。

Ebm7, Abm7, D7, GbM7, C?, BM7, Bb7

Cがよく分からないですが、あとはだいたいコード候補が分かりましたね。
ルートはどうやって取るねん!!という声が聞こえてきそうです。気合いで取ってください。笑 こればっかりは仕方ない。ピアノ出身の人って結構音感良いと思いますが、低音の音取りってほとんどやったことないと思います。ということで最初は難しいですが、こればっかりはやらないと話にならないので頑張ってください!笑 特に今回はピアノの左手がめちゃくちゃ聞こえるので、ベースラインの音取りという意味では相当簡単な部類です。 そうはいっても・・・という読者様のためにヒント。ここも、基本的にはダイアトニックコードのどれかである可能性が極めて高いので、基本的には選択肢は7つしかありません。あとは、非常に感覚的ですが、「低すぎて聞こえねーよ!!!」というときは大体CとかC#あたりです。それより下はほぼでてこないと思います。

コード候補の検証

さて、次は、この候補が本当に合っているのか検証します。検証のしかたは3段階あります。
ステップ1:トップノートが候補コードのコードトーンかどうか
ステップ2:理論から攻めた時に妥当か
ステップ3:響きが同じかどうか

3はちとムズイですが、やっぱり避けて通れません。コード理論から攻めるのには限界があるので・・・ 

コード候補の検証 ステップ1

まあ、まずは1からやりましょう。聞いてみると、トップノートはこんなかんじになっていると思います。

Gb, Gb, Ab, Gb, Gb, Gb, Gb

すごいですね、これ。コード進行のキモとして、トップノートをなるべく動かさない、という原則があるんですが、ここまで動かないのも珍しいですよね。(余談ですが、同じくJamiroquaiのLittle Lという曲も、イントロのトップノートが全然動かないです。)

さて、一つ一つ見て行きましょう。

①Ebm7はGbを含んでいるのでOK、
②Abm7もGbを含んでいるのでOK、
③D7もAbを含んでいるのでOK、
④GbM7もGbを含んでいるのでOK、
⑤Cは不明、
⑥BM7もGbを含んでいるのでOK、
⑦Bb7はGbを含んでいないのでNG

と、まずはこんなかんじになります。

ステップ2

さて、次はコード理論の観点からチェックします。まず、コード①~③に着目すると、II-V進行になっていますね。つまり、②はセブンスである可能性があります。ということで、ステップ3で、「②についてはセブンスの可能性もある」と考えて検証する必要があります。
次に、よく分からない⑤のCですが、CがルートでトップノートがGbということは、よく考えるとCm7-5しかほぼありえないわけですね。一応可能性としてオルタード系(ここでは#11)のセブンスの可能性もありますが、オルタード系セブンスは基本5度下のマイナーコードで解決される、という理論の原則が分かっていれば、今回は次のコードが半音下のメジャーコードなので、排除できます。
最後に、⑦Bb7のコードトーンにGbがないためNGとなっています。しかし、理論で見ていくと、Bb7というのは、①のEbm7に解決するのにうってつけです。しかも、GbはBb7から見るとb13th(オルタードテンション)となっており、これを加えることでますますEbm7に戻りやすくなります。更に、直前のコードをIVM7とかんがえると、IV-V-Iという超ポピュラーな進行が浮かび上がってきます。ということで、ここでのGbはコードトーンではなく、オルタードのテンションという解釈をすることが一番自然です。

ここまでで、最初に作ったコード進行がこんなかんじになりました。

Ebm7, Ab7, D7, GbM7, Cm7-5, BM7, Bb7(b13)

さて、次はいよいよ最後の難関です。

ステップ3 響きから判断する

さて、ここが難しいところです。ここまでやってきたステップ1,2は、実は、このステップ3の難易度を下げることが目的です。というのも、闇雲に響きから判断するのはめちゃくちゃ難しいですが、ダイアトニックコードやコード進行等のアプローチで候補となるコードの選択範囲を狭め、2択や3択にしていけば、響きから判断できる可能性はグッと高まるからです。それでは、やってみましょう。

まず、②Abm7ですが、これは実際に自分で弾いてみれば一目瞭然かもしれませんね。音源で明らかに明るい響きが聞いて取れますので、Ab7で決定です。
次に、③Db7ですが、これはやや難しいですが、音源はDb7より複雑な響きをしているように聞こえます。テンションが入ってる?と思ってDb7にいくつかテンションをはめてもイマイチそれらしく聞こえない・・・。実は、これはJazz以外のポピュラー音楽では超使われるのですが、IIm7 on Vという形のオンコードです(発展形で、IVM7 on Vというのもあります)。
Abm7の転回形にDbのルートを組み合わせると、かなりそれらしく聞こえると思います。ということでこれはAbm7/Dbが正解です。これはコード理論の本ではあまり扱ってくれないですが、死ぬほど出てきます。普通のセブンスだと「ちょっと響きが直接的すぎる」という時で、テンションコードでもしっくりこない時はこれを試しましょう。逆に言えば、理論やダイアトニックコードで詰めた時にセブンスが出てきそうなところでは、セブンスのテンションとこのオンコードを確認すれば大抵どちらかが当たります。
最後に、④GbM7です。ボイシングの原則のひとつに、トップノートと2個目の音が半音でぶつかってはダメ、というルールがあります。このコードのトップノートはGbでしたね。そうすると、積み方は必然的に下からBb, Db, F, Gbとなりますね。ここで、FとGbが半音でぶつかるので、基本はこういうボイシングはしません。この原則から、GbM7はNGとして排除できたのですが、わざとそういう効果を狙うこともあるので、理論で切らずに最終的な確認はステップ3に残しました。で、聞いてみるとトップノートが濁ったかんじはしませんね。ダイアトニックコード上ではメジャーコード、しかもII-Vの解決先、と来たら、GbMかGbM7かGbM6しかないです。GbMだとあまりにサッパリしすぎていることは弾けばすぐ分かる(と思う)ので、ここはGbM6が導き出せると思います。

という風にやると、答えは、
Ebm7, Ab7, Abm7/Db, GbM6, Cm7-5, BM7, Bb7(-13)

となりました。ちなみにボイシングについてですが、これはこれで詳しく書く必要があるんですが、、、基本的には、トップノートが分かって左手(ルート音)がわかっているので、あとは残りの音を右手で弾けるようなボイシングにすればおしまいです。たとえば、Ebm7であれば、ルートがEbでトップノートがGbですよね。なので、Ebを左手で弾いて、トップノートをGbにして、残った2つの音(Bb, Db)を右手で弾けるようにボイシングします。下からEb, Bb, Db, Gb、となります。考え方は簡単だと思いますが、自由に弾きこなすには結構な時間がかかると思いますので、鍛錬あるのみ・・・。

ちなみに、もう少し詳しいボイシングのお話はこちら↓

初めてキーボードをはじめるあなたに(7)コードはわかったけどボイシングどうすんねん - so far

ということで

たいていの曲は、こんなかんじで耳コピできちゃいます。注意したいのは、不思議なサウンドがウリのアーティストとか、アニソンとかはこれでは対応できないものも多いので、まず最初はR&Bもしくはそれっぽい人の曲で試してみるといいと思います。できなかったらYoutubeのURL付でコメントくださいwでは幸運を祈る。